かつてこんなチャンピオンがいたことを知っていますか?
あなたは「大場政夫」というボクサーをご存知ですか?
何度かテレビでも取り上げられてご存知だという方もいらっしゃるかと思います。
「永遠のチャンピオン」として世界王者のまま、23歳という若さで交通事故死した悲劇のヒーローです。
今、注目したいのは彼の戦いぶりです。
歴代チャンピオンの中でも、とにかく劇的な内容の試合が多かったのです。
いま、そのファイトぶりを振り返ってみると胸が熱くなります。
「永遠のチャンピオン!大場政夫」をご紹介します。
♦逆転貴公子、「大場政夫」は必ず逆転勝ちする!
2020年6月までに日本のジム所属の世界チャンピオンは92人(外国籍の選手含む)生まれています。その中で8人目の王者となったのが「大場政夫」でした。
これまでファイティング原田、具志堅用高、輪島功一や現在の井上尚弥など幾多の名選手が誕生してきました。
しかし、「大場政夫」その存在感は特筆しています。
1970年10月22日、タイのベルクレック・チャルバンチャイを破ってWBA世界フライ級チャンピオンになっています。
今をときめく名門「帝拳ジム」の最初のチャンピオンでした。
彼のボクシングスタイルは前に出て打ち合うスタイルではなく、足を使ったアウトボクシングでチャンスとみるや一気呵成に攻めるスタイルでした。
その内容とは、初回ないしは2ラウンドで不用意なパンチを喰らい、ダウンを奪われて不利な状況に陥ります。
そこから徐々に粘り強く形勢を立て直していき、最終的には相手をリングに沈めるという日本人好みの試合を何度も魅せてくれています。
いつしか、そのファイトぶりは「逆転の貴公子」とか「狂気の右ストレート」とも呼ばれるようになっていました。
驚異的な負けじ魂が、諦めてもおかしくない展開でも状況をひっくり返してきたのです。
そんなチャンピオンを生んだ背景を追ってみましょう。
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♦チャンピオン「大場政夫」が生まれた背景
「大場政夫」は1949年、東京足立区で5人兄弟の3番目(次男)として生まれます。
父親のギャンブル好きから貧困生活を余儀なくされ、中学を出てアメ横の菓子問屋に就職します。
同時にボクシングファンだった父の影響から「帝拳ジム」に入門し、ボクサーを目指します。
夢はボクシングで世界王者になり、両親に新築の家を建ててやりたいということでした。
この頃のボクサー志願者にありがちな、ケンカ好きな不良っぽいイメージとはかけ離れています。
むしろ友達とケンカして泣きながら帰ると、父親にどやされるのが嫌でじっと耐えていたような孤独な子供時代だったようです。
「帝拳ジム」では長野ハルオーナー、桑田トレーナーに素質を見出されメキメキ成長していきます。
そしてチャンピオンに輝くのです。
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♦鮮烈な印象の「チャチャイ・チオノイ」戦が残してくれたもの
数々の試合の中でも最もインパクトが強いのは、5度目の防衛戦(最後の試合)となった「チャチャイ・チオノイ」(タイ)戦です。
「チャチャイ・チオノイ」はチャンピオンにもなったこともある、強烈なフックが武器の最強チャレンジャーでした。
この試合、ゴング開始早々にいきなりロングフックをまともに喰らってしまいます。
体勢悪く、右足の上に載っかかるように尻もちをついてしまったのです。
足首を捻挫してしまったのです。
この時点でレフェリーストップがかかっても、コーナーからタオルが投げられてもおかしくない状況でした。
恐らく、現在ではレフェリーストップでしょう。
何とかこのラウンドはしのぎますが、右足を引きずっての試合展開を余儀なくされてしまったのです。
ラウンドの各合間には氷水で足を冷やして臨んでいます。
誰もがチャンピオンの敗戦を想像したことでしょう。
現に挑戦者は試合後、「九分九厘勝ったと思った」と言っています。
その姿は痛々しく映り、大半の方がチャンピオンが前へ出ていく度に、もう試合を止めてくれと思ったことでしょう。
しかし、ここから「大場政夫」は盛り返していくのです。傷めた足をひきずり、果敢にパンチを打っていきます。とうとう中盤から終盤にかけてペースは逆転します。
そして12回、鬼気迫る「大場政夫」に圧倒され、挑戦者は連打を受けて3度ダウンし、KOされるのです。
この瞬間、会場にいた観客もテレビで観戦した誰もが興奮せずにはいられませんでした。
目に熱いものを浮かべたにちがいありません。
今日になってあらためて観ても熱いものがこみ上げてきます。当時は「大場政夫」って凄い根性のボクサーだなという印象が支配していましたが、最近は感じ方が変わってきました。
あのファイトは「何事もあきらめてはいけない」と訴えているような気がするのです。
絶望の中でも少しずつ前へ進めばなんとかなると。
♦まとめ
「永遠のチャンピオン!大場政夫」を取り上げてきました。
現在は便利な世の中になりました。リアルタイムでないにしろYouTubeで「大場政夫」のボクシングが観られます。
永遠であるのは、彼のファイトからいつまでも勇気、希望を届けてくれるからではないでしょうか。
まだまだ続くコロナ禍で、明日への生活に憂いている方や毎年のように起こる自然災害で希望を失いかけた方もいらっしゃるかもしれません。彼の決してあきらめない根性は一筋の光になるのではないでしょうか。
読了いただきましてありがとうございました。